時代への視点  
第161号
 稲城市長石川 良一

遠藤市蔵さんの青春日記を読む ('06,03,01)

 遠藤市蔵さんは、永く稲城市商店会連合会会長として市内商業発展のために尽くしてこられた方です。またその前は、師範学校を卒業して教壇に立った経験も持たれ、市議会議員も1期務められました。その遠藤さんが昨年「昭和八十年」という本を出版しました。たまたま昨年の暮れにご本人から贈呈いただき、拝読しました。
 この本は、昭和4年に稲城村東長沼に生まれた遠藤さんが高等小学校を卒業して、陸軍少年飛行兵に志願、入隊し敗戦を迎えるまでの12歳から16歳当時の日記を中心に執筆されています。
 まず驚いたのが、当時はまだ片田舎だった稲城で、遠藤さんの行動範囲が広いことでした。新宿や浅草辺りまでは日帰りで行動していたことでした。昭和30年代に坂浜で育った私などより、行動範囲は広いかも知れません。また、お父さんは大工さんでしたが、農業も営んでおり、当時の子供は本当に良く働いたということもわかります。高等科の学生でありながら戦争に関する新聞記事を日記にまとめており、遠藤さんの国に対する思いがにじみ出ています。また戦時中でもあり、出征兵士を身近で送ったり、戦死者を迎えたりと、死がひどく村の中で身近にあったこともわかります。昭和16年12月8日に米英と開戦したことを記念して、戦時中、毎月8日は大詔奉戴日(たいしょうほうたいび)として儀式を行っていたことは知りませんでした。日記の書き方も「待ちに待った遠足は今日である」から「中隊長殿ヨリ注意『目ニ威力ヲツケヨ、眠ソウナ目ツキヲスルナ』」と、カタカナと漢字だけへと変わり、自意識が少年から青年に移っていく青春のにおいを感じました。志願した陸軍航空隊では先輩たちが次々と特攻隊員として出撃して行ったことや、軍隊の制裁の酷(ひど)さ、やるせなさも克明に記されています。
 現在から見た戦争や歴史の評価ではなく、当時の「青年遠藤市蔵」氏の体や心を通じて見えてくる青春時の生や死、国家や戦争が蘇(よみがえ)ってきます。そして、それらをどう受け止めるべきかという、重いテーマが伝わってきます。昭和10年代の稲城を知る上でも貴重な資料といえます。多くの方にご一読をお勧めします。
 

時代への視点 No,161('06,03,01) 


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