| 時代への視点 |
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映画「ラストサムライ」を観て ('04,02,01)
| 新年に入って、各映画賞の候補に挙げられているトム・クルーズ主演の「ラスト・サムライ」を観ました。
まず驚いたのは、横浜港の街並みをはじめとするリアリズムを追求したセットと、豪華で重厚さの漂う鎧(よろい)・兜(かぶと)などの衣装のけん爛(らん)さでした。 また、活劇シーンの迫力と美しさは、ハリウッドならではのものと感心しました。映画を観ながら、最後に残った箱館(函館)で、榎本武揚や新選組副長だった土方歳三らの幕府軍と共に、フランス将校が戦ったという事実を思い出しました。 ブリューネ大尉ら4人は、幕府の御雇(おやとい)士官でしたが、フランス本国はすでに幕府軍に肩入れすることを好まないことから、フランス軍を脱走して榎本軍に参加したのです。ラスト・サムライのシーンにもあったガットリング機関砲に事実圧倒されています。箱館では、ブリューネらフランス士官は、負傷したニコールを助けて降伏時の混乱にまぎれてフランス公使舘に駆け込みました。まさに滅び行く幕府軍の義と武士道精神に共鳴して身を挺(てい)して戦ったのです。それはサムライにフランスの騎士道精神を見たと言えます。ブリューネは帰国後、脱走の罪で予備役に回されましたが、プロシャ戦争が起こり師団長に、そして最後には少将にまでなったそうです。 渡辺謙演じる「勝元」という侍は、明治天皇の教育役であった山岡鉄舟のようでもあり、城山で自刃した西郷隆盛のようでもありました。侍もインディアンのように滅びゆくものとして描かれていましたが、名誉を重んじ恥を嫌う日本人の倫理観の背骨ともいえるサムライ精神は、太平洋戦争敗北後も「恥の文化」としてかすかに引き継がれてきました。 明治初年の廃(はい)仏(ぶつ)きしゃくに象徴される破壊は、バーミヤン遺跡を爆破したアフガニスタンのタリバンや、中国の紅衛兵を笑えないと作家の早乙女貢氏は指摘しています。トム・クルーズという当代きっての人気俳優によってサムライの魂に多くの人の関心を集める機会を得たわけです。武士道を通して時代の転換点であった明治維新を問い直してみることによって「今」という時代も見えてくるはずです。 |
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